『サンライズフェスティバル2018光焔 おんがく!!~アイカツ!編~』イベントオフィシャルロングレポート

『サンライズフェスティバル2018光焔 おんがく!!~アイカツ!編~』イベントオフィシャルロングレポート

2018年7月11日、新宿バルト9(シアター9)で『サンライズフェスティバル2018光焔 おんがく!!~アイカツ!編~』が開催された。

出演者はTVアニメ『アイカツ!』の木村隆一監督、音楽を担当したMONACAの石濱 翔、帆足圭吾、田中秀和、音楽プロデューサーの黒田 学の5名。司会の呼び込みで5人が登壇し、まずはひとことずつ挨拶。続いて上映されるアニメ「アイカツ!」の20話・59話で流れる音楽をまとめた表【※図版参照】がスクリーンに映し出されると、会場からは大きなどよめきが起こった。


そのままの流れで、登壇者は客席の最前列に用意された席へと移動し、20話・59話を上映しながらのコメンタリーが行われた。コメント内容は以下のようなものが披露された。

<オーディオ・コメンタリーより抜粋>※以下、敬称略

■20話「ヴァンパイア・スキャンダル」

田中:(「アイドルのデータバンク」を聴いて)リズムトラックの感じとかすごく岡部さん【※MONACAの岡部啓一氏、作曲・編曲・プロデュースなどを手がける】ぽい曲。

帆足:バンク【※劇中で繰り返し使用するシーンを言う、ここでは「芸能人はカードが命」が使われているフィッティングシーンのこと】の発注がギリギリで、映像を頂いて制作するんですけど、いろんなところがギリギリでした(笑)

木村:(「血を吸うわよ?」を聴いて)ここが高田さん【※MONACAの高田龍一氏、作曲・編曲を手がける】ぽい、という特徴はあるんですか?

石濱:芸大の音、アカデミックな音がします!

木村:劇伴の発注のMONACA内での割り振りは、打ち合わせのあとに持って帰ってもらって、社内で得意な人で分担してくれている。

黒田:(「ここはスターライト学園」を聴いて)帆足さんの曲はオーケストラ編成、クラシカルな印象があります。

帆足:(この曲は)ネットで某RPGっぽいといわれていて、めっちゃわかると思いました。(笑)

木村:「アイカツ!」は子供向けだから、普通のアニメよりも若干劇伴を多くつけているんですよ。

石濱:(劇中の楽曲を聴きながら)このサウンドは「圭吾D」っぽいですね。「圭吾D」と呼んでいる(帆足さんの曲でよく使われる)シンセサイザーのピアノ音源のプリセットがあるんです。

帆足:自分で弾くときに一番良くなる感じになるようにカスタマイズしていて、シンセの音源と一緒にプリセットも渡したらめちゃくちゃ石濱さんにいじられていたんです!

田中:ぼくのときはもう「圭吾D」使えなくなっていたんですよ…。

帆足:スタインウェイのDグランド【※高級グランドピアノ】っぽい音を再現したものですね。でもあれ、もう古い音だからあんまり使わないほうがいいですよ!(笑)

帆足:(「硝子ドール」は初めての歌ものだったため)加減がわからず(笑)。カラオケで歌うときに間奏(約1分50秒)が長すぎて無言になる、といわれて、本当にすみません(笑)

田中:(「親友でライバル、ライバルで親友」を聴いて)これいい曲ですよね。岡部さんのメロディー、さすがです。

木村:「アイカツ!」初期の劇伴制作の思い出とかってありますか?

田中:当時岡部さんが骨折していて、初期の曲を聴くと「痛そうだったなあ」って思います(笑)

石濱:初期の楽曲はリミックスとかも見越して制作して納品していましたね。

帆足:どの楽曲もレイヤー【※階層】を細かく分けて、ステム【※リズムやメロディー、楽器別などバラバラのデータ】で納品していました。

木村:映像の編集のときにステムが必要になるんですよね。

木村:(サウンドトラックに収録されている)劇伴のタイトルは臼倉さん【※ランティスの音楽プロデューサー】が付けています。

帆足:その楽曲が初出のシチュエーションがタイトルになっている感じですね。

(作曲する際はどんな楽器が作りやすいですか?)

石濱・帆足・田中:鍵盤です。

石濱:鍵盤なんですけど、歌ものやギターメインの曲を作るときはギターを弾いてみたりします。

帆足:(「芸能人はカードが命!」は)2年目の劇伴発注の際に音響監督の菊田浩巳さんから「ゴージャスに」という依頼があった【※毎年、同じ曲でバージョン違いが作成され4種類作られている】。サビに入る前のところを変化させて対応している。

(「硝子ドール」に関して)

帆足:北欧のメタルバンドの曲を例に挙げられて、ドラマチックな感じのすごくヘヴィな楽曲にしたいと言われまして。

木村:このころは水島精二さんがスーパーバイザーとして参加してくれていて、水島さんがメタル好きだからそういう注文になった。

帆足:僕もメタルは好きなのでどれくらい本気で作ったらいいのか? 本気で作ると小さい子が泣いちゃいますよ? と言ったら、本当にガチでやってという話をされた(笑)。かなり悩んだ記憶があります。

木村:この曲はすごいインパクトがありました。ユリカの人気はこの曲のおかげもあるのかな、と。ユリカは出す前は不安なところもあった。吸血鬼キャラで……。

田中:「カレンダーガール」も水島さんからのリテイクが何度かあって、曲中や冒頭のボーカルの(声を加工する)フィルターの処理など最初は入れていなかった。途中の「Yeah!」というコーラスは逆に水島さんは入れたくないと言っていたのを、僕がわがままで入れた。最近お会いしたときに「やっぱり入れてよかったね」と言ってもらえてよかった。

■第59話「ちょこっと解決☆チョコポップ探偵」

(2年目の音楽発注がギリギリのスケジュールだったという話を受けて)

木村:「アイカツ!」の発注がギリギリじゃなかったことはないよ!(笑)

(OP「KIRA☆Power」を聴いて)

石濱:これミックス(楽曲の最終調整)し直しましたよね。ゲームの筐体とアニメでは若干違うんですよね。鳴りが違う気がします。

帆足:当時のデータカードダスの筐体ってモノラル【※スピーカーが1つ】でしたよね?

石濱:(サビ前部分を聴いて)今のところ逆位相【※音の波形の基準となるものに、山と谷を逆にした波形を重ねること。異なる波形をステレオで同時に聞くことで、効果が生まれる。】を貼っているのでモノラルだと音消えちゃうんですよ(笑)
今聴くとすごくやり直したい。なので、ageHa(で開催されたDJイベント)では(この楽曲を)かけませんでした(笑)

帆足:(「井戸端会議」を聴いて)(2年目に問題になったのが)日常曲がぜんぜん足りないという話をされた。

黒田:1年目はバリエーションも含めると70曲くらい作っていますよね。

木村:そう、それでも当初よりも日常ばっかりで使い切っちゃった(笑)

木村:(MONACAのメンバーで)劇伴を割り振るときってみんなでテーブル囲んで決めたりするんですか?

帆足:みんなでテーブル囲んで決めますね。

田中:挙手制みたいな感じです。

帆足:(楽曲の)オーダーとリストを見て『ピンと来る人はいる?』と聞いても誰も何も言わない(笑)

石濱:だいたい『○○といえば~?』みたいな大学の飲み会みたいなノリで決まる(笑)

帆足:『この曲はこのジャンルって指定があるから、このジャンルが一番得意な人といえば~?』とみんなでその人を見て決まっていく。「芸能人はカードが命」も『バンクと言えば~?』みたいな感じで決まって(笑)

(「オケオケオッケー♪を聴いて」)

木村:キャラクターがどんどん増えてくるとキャラの曲を発注することでオーダーが埋まっていくようになって。1キャラに2曲ぐらいは定番の曲を作ってもらっていた。

帆足:ネットで「アイカツ!」の音楽は某スマートフォンの着信音っぽいといわれた(笑)。
ピアノ、エレキ、マリンバの(シンセサイザーの)音色をよく使うので、それが某スマホっぽさにつながっているのかも。

田中:「新・チョコレート事件」はゆなさん【※STAR☆ANIS】がひとりで二役(かえで・きい)を歌い分けている。ほとんど芸。ショートバージョンのあと、フルバージョンを収録するときに「もっときいのキャラクターを出せそう」とゆなさんから提案があって録り直しています。

木村:いろんなシチュエーションの劇伴を作ってもらっていたから、3年目のころにはバラエティ豊かに曲が揃っていた。

田中:「オリジナルスター☆彡」は「カレンダーガール」の系譜として作った。アース・ウィンド・アンド・ファイアー【※ファンク・ミュージックを代表する名バンド】のオマージュ要素を入れた、特にイントロやAメロは意識している曲なので、EDの映像に「EARTH」という文字があって驚きました(笑)。

木村:作った石川さんは全く意識してないと思いますね(笑)。

<トークセッションパート>
2話分のコメンタリー終了後は、トークパートがスタート。

■MONACAのアツい「アイカツ!」愛

――イベントの前にMONACAの皆さんに、今回のイベントで上映した2話以外で印象に残った話数をお聞きしていたのですが、石濱さんが第178話「最高のプレゼント」、帆足さんが第6話「サインに夢中!」、田中さんが第50話「思い出は未来のなかに」となっております。何かエピソードがあれば教えていただければと思います。

石濱:第178話は最終話ですから、選んだ理由はもう言わなくても分かると思うんですけど(笑)。ただ、自分が選んだ理由としては「START DASH SENSATION」がフルでかかるのが大きいですね。あの曲はDメロが流れることにいちばん意味があるかなと思っていたので……。

木村:そうですね。

黒田:2番のBメロ、「あの日があって今が~」という歌詞から始まるところは、映像と曲がすごく合っていて、エモいなと思いました。すみません、ただの個人の感想です(笑)。

木村:あの「START DASH SENSATION」が流れるところは、シナリオにはセリフがないんです。僕が絵コンテを書くときにセリフを入れて行っているので、割と歌の内容に映像を合わせているんですよ。

――逆「フィルムスコアリング」みたいな感じですか?【※「フィルムスコアリング」は、映像に合わせて劇伴音楽を作成する制作方式。映画の劇伴ではこの方式がとられることが多い。】

木村:そうですね。「START DASH SENSATION」をフルでかけたいというのは加藤(陽一)さん【※「アイカツ!」のシリーズ構成。シリーズ構成とは、作品のシナリオ全体のディレクションを行う。】にも言われていて、マラソンをするシーンでフルにかけるというざっくりとしたアイデアまではシナリオに書いてあったんです。そのアイデアを元に、歌に合わせる形で絵コンテを描いて、セリフをつけるところは僕がやりました。……ぶっちゃけ、めちゃくちゃ時間がかかって、スケジュールを遅らせてしまったんですよね(笑)。でも、おかげでそれまでシリーズに出てきた人たちがみんな出てくる、面白いものになりました。

――まさに、あのシーンがあっての178話ですよね。帆足さんが第6話「サインに夢中!」を選ばれた理由は?

帆足:ごめんなさい、僕、曲となんの関係もなく選んでしまいました(笑)。単純にストーリーですね。すごくシリーズ初期の頃の話で、まだ駆け出しのアイドルが、ファンの人たちに書くサインを考えるときに張り切りすぎて、むちゃくちゃ難しいサインを考えてしまって、実際にお客さんの前で書くときに困るという。書くのに夢中になりすぎて、時間がかかりすぎて、書く方もどんどん顔がしなびて行くし、並んでいた列からはどんどん人がいなくなっていく……という描写を見て、「ちゃんと自分が頑張るのもいいけど、受取り手側のこともちゃんと考えなくちゃいけないよ」という、教訓を得られたんですよね。MONACAのみんなで「これは多分、アイドルだけじゃなくて、うちらの仕事もそうだよね」といいながら観ていた記憶があるんです。とても勉強になった、色々と気づかされた話数で印象に残っています。……本当に音楽と何も関係なくてごめんなさい(笑)。

田中:いやいや、たしかにサインの話は、音楽でも考え方は一緒です。「音を詰め込めばいいってもんじゃない」という話にもつながる。

――楽曲制作のときには、要素を引き算することが必要なときもありますよね。

田中:そう。相手の目を見てね、作らないと。

帆足:聞く人、歌う人のことをちゃんと考えて書かないといけませんよね。

――田中さんは50話「思い出は未来のなかに」です。

田中:はい。僕、このお話大好きで、何度見てもウルっときてしまう。これも逆「フィルムスコアリング」といいますか、加藤陽一さんがこの回の脚本は書かれたんですけど、「カレンダーガール」がライブシーンから繋げる形でフルコーラスで流れるんですね。で、ちょうどDメロ、「思い出は未来のなかに」という歌詞のところで、あおいちゃんがスターライト学園の門を見て、最初に登校したときのことを思い出して、涙をポロポロッと零して、それがキラキラ~っとなびくんですけど、涙と「カレンダーガール」の落ちサビ前のウィンドチャイムの音が合っているんですね。このアイデアは、ずっと前から加藤さんがやりたいと言っていたんですよ。

木村:たしかに、あの表現はシナリオですでに書いてあったものでした。

田中:やりたいとおっしゃっていたことがきちんと実現されていたことにも感動しましたし、話も素晴らしいですし、いちばん思い入れ深い回です。

■駆け抜けるスケジュール

――では、あらためてここからは楽曲制作を行っていた当時の思い出を振り返ってまいります。実際に使用された楽曲の制作スケジュール表を見てみましょう。(イベントではスクリーン全体に制作スケジュール表が映されました)
表の中でみなさんがいちばん不思議に思われるのは、「スポッティング」という枠ではないでしょうか。黒田さん、解説をお願いします。

黒田:「アイカツ!」という作品の特徴として、アニメとDCD(データカードダス)、つまりゲーム筐体との連動展開があります。そのため楽曲制作時には、まずゲームに必要なショートサイズの楽曲を制作します。曲の発注後に、まずは曲のラフ、「こんな曲ですよ」というイメージを掴むための音源を提出していただいて、それをもとに歌詞をつけていただく。そうして出来上がったラフ音源と歌詞を元に、ゲームのダンスシーンでの振り付けやモーションキャプチャーをとるための、尺とテンポとこういう曲だというのが分かる素材を用意する必要があるんですね。「スポッティング」の締切というのは、そのゲームのダンスシーンのための素材をここまでに用意してください、という意味なんです。

――となると、ゲーム連動がないアニメよりもスケジュールがかなり前倒しされるわけですよね?

黒田:そうですね。アニメーションでダビング【※セリフと音楽、効果音をまとめる音響作業】をする段階よりもだいぶ前にゲームの作業は進んでいるので、発表する半年以上前に曲の制作は始まっている状態になります。

田中:ショートサイズとフルサイズの締切に時間差が結構あるんですよね。一ヶ月とか、長いときは二ヶ月とか違う。

黒田:フルサイズの楽曲はCDに収録するために作成するものなので、極論をいえばCD 収録用のマスタリングの作業に間に合えば問題ないからですね。

――今ご覧いただいた音源制作のスケジュールを、アニメの放送と合わせた表が次のものになります。

――ピンク色のところが1年目の放送軸で、水色と青が2年目になります。1年目の後半に入ったあたり、5月の時点で1年目最後の劇伴の納品が終わっています。

黒田:1年目の放送途中には、もう次の年の楽曲を発注していますね。

木村:2年目の10月に放送される曲を3月ぐらいに発注しているから……7ヶ月前くらい。さきほどお話があったとおり、ゲーム筐体に合わせてショートサイズのスケジュールが前倒しされることを考えると、アニメで使われる7ヶ月前の発注であっても、結構ギリギリなんですよね。

――劇伴の発注が何度かに分かれていますが、1年間かけて放送するアニメの劇伴は2~3回に分けて発注することが多いです。とはいえ『2013年8月・2年目の劇伴発注(1回目)』とあり『2013年9月・2年目の劇伴 最初の納品』は20日ぐらいしか空いていません。すごいスケジュールです。

木村:歌ものはシナリオと関係なく発注できるのですが、劇伴はシナリオがないとどうしようもないですからね。そんなこともあって、どうしてもやや発注まで時間がかかってしまうんです。

黒田:音響監督の菊田浩巳さんに劇伴メニュー……「こういうイメージの曲がほしいですと」いうリストを書いていただくんですけど、シナリオがある程度溜まったところで書いていただくことが多いんです。それを待っている間に、時間が経ってしまうこともありました。

――表には2013年の9月23日に劇伴の「芸能人はカードが命!Ver.2」が納品されたとありますね。

石濱:(10月から放送開始なので)日付で言われるとドキっとします(笑)。

帆足:いやぁ、20日くらいにまだ収録していた覚えがあります(笑)。

――そして2014年5月9日に最後の納品。二年目の後半のオンエアが始まったころに、2年目の劇伴の納品が終わる。

帆足:振り返ってみるとものすごいスケジュールでしたね(笑)。

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